宗教について 〜 人の生と死を考える 注100

公開: 2023年4月3日

更新: 2023年4月3日

注100. 祖先崇拝

人間が、死んだ父や母、さらにそれらの人々を産み、育ててくれた祖父、祖母など、自分の血縁に関わる人々を崇め、感謝する心の動きを祖先崇拝と呼びます。祖先崇拝の心は、我々のような新人類以前の、ネアンデルタール人にもあったと考えられています。

キリスト教の基になったユダヤ教の教えである「モーぜの十戒」の中にも、神の教えの一つとして、「自分の祖先を大切にしなさい。」とする言葉があります。その意味でも、この祖先崇拝の儀礼や制度は、我々、人間にとって、根源的なものであると言えるでしょう。それは、人間以外の動物は、自分達の将来の死を考えないことと関係しているようです。人間が、物事を考え、物事の将来に起きる変化を読み取る力を得たことが、自分につながる過去に生きた人々への思いをめぐらせるようにもしたからでしょう。

かつて、日本のどの村にもあった「氏神」と呼ばれた神を祀った神社も、祖先崇拝の形式の一つです。古代の日本の村は、同じ血統の人々が集まって、協力して生きてゆく場でもありました。その同じ血統の源(みなもと)を辿ってゆきつく祖先を祀ったのが、氏神です。出雲の国を作った大国主(おおくにぬし)の命(みこと)を祀った出雲大社も、出雲の人々のルーツである大国主に対する祖先崇拝の心から建造された神社です。これ以外にも、天皇家を支えた豪族の物部氏のルーツである家系を祀った、物部神社なども有名です。

参考になる読み物